オンライン・レッスン フルート/ジャズフルート科

2020/06/25

第8回
「カラオケに合わせて吹いてみよう」その2

 

 老人福祉センターなどでのクラスも、7月からは再開できそうな雰囲気になってきました。再開を待ち望んでいらっしゃる声は聞こえてきていましたから、ようやくお応えできるようになってきたかと。

 

 3月ころに、ライブハウスでのクラスター感染が報じられたあたり、仲間うちでよく話題に上がっていたのは、「楽器を持って電車に乗ると白い目で見られる、避けられる」ということ。ギター・ベースの場合が多かったようですけど。

 

 新種のウイルスによる感染症ですから、専門家ですら対応に定説はまだ出来上がっていない状態。知識に乏しいとなおさら不安感いっぱいになるのがニンゲンの心理ってもんでしょうが、なんなんでしょうねぇ。

 

 株式会社ヤマハミュージックジャパンが、管楽器を演奏している時の飛沫拡散状況の可視化実験を行いました。結果は、まぁ想像した通りと言えますが、トランペットなどの金管楽器クラリネットなどの(リード)木管楽器に比べ、フルートの場合は「はっきりとしゃべっているときと同じ程度」の飛沫の拡散が確認されるそうです。最大1mほど飛ぶそうです。飛沫対策が対応のすべてとは思えませんが、フルートの場合、「対面で吹かない」「隣の人との距離を取る」がポイントになるかと思います。練習(演奏)後、飛沫飛散範囲の床を清掃(消毒)すればカンペキか?さらには「定点で吹く」つまり、吹く場所をあまり変えない、動き回りながら吹かない、かなぁ。え、ふつう動き回らないって?僕は踊りながら吹くのがフツーだからキビしいけど…

 

で、今日の本題です。

 

「アドリブってなに?」

 

 わかりやすくヒトコトで言うと、「明石家さんまさん」ですね。台本(楽譜)通りに喋る(吹く)んじゃなくて、その場の思い付きで吹く。でもただ自分勝手に、ではなくて周囲に反応してコミュニケーション取りながら、です。音楽の場合、周囲とはバッキングのリズムだったり、ハーモニー、さらには他のミュージシャンとのアイコンタクトだったりなわけですが、カラオケにはアイコンタクトはないわな。

 で、ここが最大のポイントですが、「面白くなければダメ」。つまりいくら理論的にどう、パーカーのフレーズがどう、とやっても面白くなかったら、カッコよくなかったらアウト。ギョーカイでは「成立してない」と申します。

 

 ということは逆説的にはリクツまったく抜きでも、カッコよく聴こえればおっけーなわけです。そんなことアリエナイって?僕も以前はそう思っていました。ところが、いま現在の生徒さんに、まったくリクツ抜きにそこそこちゃんと吹く、カッコよく吹くひとがいるんです。あり得るんですね。もちろん彼女も今日からスグにプロのジャズフルーティストとして独り立ち出来る、ってわけじゃありません。でもジャズアドリブの必要最低限(以上?)のことはこなしてるし、なにより本人楽しそうなのがいちばん。趣味のフルート、楽しむためにやってるんですから。

 

 とは言っても、楽器屋の書棚に並んでいる売らんかな本のタイトルのような、「1週間で吹ける~」みたいなことをここでやろうとしているのではありません。ジャズ理論、アドリブスタディー習得には膨大な時間と労力が必要です。でもアドリブは理論と知識と記憶だけで吹くもんじゃなく、そこへ「感覚的なもの」がうまいバランスでミックスされないと成立しません。その「感覚的なもの」を開発しようよ、そっちから手をつけようよ、てのが今回の趣旨です。それに、ジャズに必須の「スピリッツ」(まぁジャズに限らないんですが。用語が違うだけ)があれば、それこそ「ド」の音だけでもジャズになるんですが、生まれついてのジャズファンでもなければ、ある意味ニホンジンの日常性からは遠いと思われるので、このへんの垣根を取っ払ってみようか、と。さきほどの生徒さんの例だと、彼女、やはり感覚が鋭いんだと思います。もうひとつは、過度に周囲を気にしない(他人とは違うことを良しとする)ところが平均的ニホンジンではないかな、と。彼女の日常からすると特になにか変わったトレーニングこなしてたり、環境的なものではなかったりと、まぁ持って生まれたものだと思うんですが、他人の持ち物羨んでいても仕方ない。で、最低限の知識を入れとくところから始めましょう。

 

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 あらためて「アランフェス」の楽譜ですが、この中の登場するコードネームの、最低線だけ知っておいてもらいます。

 

② 

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 ええっと、手元にキーボードを用意してください。独立したお子さんが昔弾いてたピアノでも、カシオトーンでもピアニカでもいいです。なにもなかったらリサイクルショップで数千円のキーボード買ってください。ミニ鍵盤のものでもいいです。もちろん理想はベヒシュタインのグランドピアノですが(笑)。そして、まず上の②の楽譜のコードを押さえて、響きをよく聴いてください。

 

 次の段階は、「アランフェス」の楽譜のBを、コードネームに従って、②の和音で続けて押さえてみてください。分数コード(Bm/Dみたいなの)は今回、分母は無視して、Bmと読んでください。

 コードネームには「読み方の法則(?)」があるんですが、今回それは省きます。単純に「アランフェス」の進行に3和音(一部4和音)を当てはめて、続けて押さえていってください。たどたどしくていいです。たどたどしくていいんですが慣れてください。いつまでも「カンペキに弾く」ことにばかり囚われているとカンジンの、弾いた和音を聴いていません。その和音の進行をキーボードでバッチリ弾けるようにすることが目的なのではなくて、「和音の感覚」を開発するためにやってるんですから。

 

 そこまで下ごしらえしたら、フルート持ってカラオケに合わせて「アドリブ」します。台本を読むのではなく自分の言葉でしゃべります。吹くまえにイメージを持つようにしてください。会話でも、アタマの中で言いたいことをまとめてから喋らないと、なに言ってるか意味不明になりますよね。テーマ(楽譜のメロディ)吹いたあと、リピートしてBに戻ったところからがアドリブです。Cの直前のスケール駆け上がりからふたたび楽譜通りに吹きます。

 難しく考えないで。最初から難しいこと吹こうとしないで(無理だから(笑))。「シ」の音だけでもカッコ良く吹く方法もあるんですよ。

 

 さっき、曲のコード進行はキーボードで押さえてみましたが、フルート持ったら「ええっとここのコードはシとレとファ#」って考えないほうがいいです。さっきのキーボードでの練習は、シツコイですが「感覚を開発」するためのものだったので。シニアの傾向としてこのへんが苦手なんですが、「あたまでっかち」状態では身体が動きません。むかし、エラい先生のだれぞが言ったのは、

「演奏者には2つのタイプがある。ひとつは『リクツはなーんにもわかってないけど、実際うまく吹く』タイプと『知識は人一倍あるがうまくない』タイプである」

じっさいのところはこの2つの中間がほとんどだとは思いますが、このことは「アタマ(思考)とカラダ(感覚)の関係」を言っているのだと思います。

 

 シニアの場合「知識はあるけどアタマデッカチ」タイプは一緒なんですが、もうひとつは「わからないから見なかったことに」かな。たしかに人生、すべてにこだわって、引っかかっていたらココロを病んじゃうんで、「流すスキル」を身に着けてきたとは思うんですが、現時点で「なんかさ、よくわかんないけどうまく吹けるんだよね」以外の方は、最低線の知識としてキーボードでの和音押さえる練習してください。それが感覚を手助けします。「正しい知識は身体を助ける」

 

 

 とぅーびーこんてぃにゅーど

 

 

 

 

 

 

 

2020/05/23

第7回

「カラオケに合わせて吹いてみよう」

 

 普段のレッスン、みなさんそれぞれご自分のレヴェルに応じて違う曲吹いていますが、ひとりだけで吹いてるシーンってほとんどないでしょ?僕が一緒に吹いてて二重奏になってるか、伴奏に合わせて吹いてるか。なぜかって… そのほうが楽しいから。

 楽しみながら吹いている中にも、いろいろな意味があるんです。フルートは吹き方で「音程」はどうにでもなってしまう楽器。音痴にならないためには、「耳をつかう」ことと「コントロールして吹く」ことが必要です。あと「音程感覚」、いわゆる音感の開発ですね。

 

 ひとりで吹く練習のなかで、「こう吹けばこうなる、ああ吹けばああなる」の積み重ねも大事なんですが、それが最終目的なわけではなく、そこで学んだスキルを使って曲を自分の思う通りに吹くことが目的なわけです。そしてその段階では、ひとり秘密練習(べつに秘密じゃなくていいんですが)のときに、いろんなことを考えながら、いわばアタマ優先で吹いていた状態から一歩先に行って、身体記憶(自動操縦)にすることが出来たコントロールは身体に任せるように配分します。そうじゃないと操作に忙殺されて楽しくない。

 

 さあてと、オンライン・レッスンらしく、ウェブ配信の教材使って進めますね。

 ようやく緊急事態宣言の解除も見えてきたきょうこのごろですが、音楽教室でのレッスンがすぐに以前のように出来るようになるのかはまだわかりません。みなさんそれぞれに、外出自粛に対応して、以前にはやっていなかったことに手を染めた方、多いと思います。シニアはパソコンとか、スマホの活用はまだまだ若者ほどじゃないと思うんですが、今後のためにも、これを機会にネットの活用を進めていただいたほうがいいんじゃないかと思います。伴奏のカラオケはYouTubeにアップしてあります。

 

 

 

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 ごぞんじの方が多いと思います。スペインの作曲家、ホアキン・ロドリーゴの作品「アランフェス協奏曲」の、有名な第2楽章のメロディですね。

 

 有名とは言っても、あらら聴くと見るとは大違いの16分音符だらけ、32分音符も!!

ですが、「ビビるんじゃなあーい!(笑)」テンポがすごーく遅いんで、32分音符ったってたいした速さじゃないです。

 

 ですが、逆に「すごーく遅いゆえ」の難しさも存在します。そう、テンポ、ビート感が取りにくい。

 教材なわけだから、「あえて」そういうのを選んでるの(笑)。この曲の場合、「いち、にい、さん、しい、」的に数えることはほとんど役に立たない(2拍子だけど)。ではどうするか。

 

 まず、楽譜最初の1小節のお休み、ここは前奏です。でも前奏とはいってもシンセのストリングスが「がーっ」て鳴ってるだけ。リズムを聴きとれるような様子はなにもないです。ですが、よく耳を澄ませて聴いてみると、ずっと同じように伸びているストリングスは、2小節目のアタマ(吹き始めるのと同じ場所)で打ち直して(弾きなおして)います。吹き出しはここに合わせるのですね。これが掴めればあとは「以下同文」。小節線のところ、あるいは2拍めのアタマで和音が変わりますから、そこへ合わせていくんです。

 だいたいが、4分音符40の速さということは、「ルバート的ニュアンス」… つまり伸び縮みしてナンボ。小節線超えもジャストにバチッと合わせる必要はゼンゼンないんですが、大局は見えていないと… ズレを認識できて手の内に入っていないと、ズレが蓄積してきて迷子になってしまいます。

 

 吹くまえからあまりアタマでっかちになってもいけないんで、まぁ吹いてみて。伴奏のYouTubeでの探し方は、

https://apc01.safelinks.protection.outlook.com/?url=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3DNfvWsJKe54I%26feature%3Dshare&data=02%7C01%7C%7Cd26e2c4d698c4401260d08d7ff115ff0%7C84df9e7fe9f640afb435aaaaaaaaaaaa%7C1%7C0%7C637258322393464402&sdata=rSb9md69AtrP1xtzadsUsssxTHA%2BRhIoM5RT%2FzSgqgY%3D&reserved=0

上のリンクをクリックするか、

 

検索エンジンで「うえの善巳」を検索

②出てきた動画一覧の中の「アランフェス・カラオケ」をクリック

で聴けるはず。再生中は上のものと同じ楽譜の画像が表示されますが、スマホの画面だと小さくてキビしいですよね。ダウンロードの方法がわからない方は郵送しますから、ご連絡ください。

 

 で、最後の段、1カッコ終わりでBにリピートしたらアドリブなんですが(笑)、

 アドリブというと、ジャズフルート科以外の方は「え、え、え、いえいえわたくしトンデモございません」とおっしゃるんですが、「ビビるんじゃなあーい!(笑)」、これもせっかくだから外出自粛中の新プロジェクト(笑)にしちまったらどうかと。詳しくは次回に。あ、参考演奏は来週あたりにアップします。録音環境が整ってないんで… (*_*)

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/05/10

第6回

 「楽器の持ち方・構え方おさらい」

 

 初めてフルート持つ人対象ではなくて、(現在の)ウチの生徒さん、中級レヴェルのひと対象です。何故かって、べつに「ウソも方便」じゃないんですが、まったく初めてのひととある程度経験があるひととでは、それぞれにわかりやすく理解してもらうために、こちら側も表現を変えるからなんです。本質は同じなんですけど。

 

 なので、ある程度吹ける方の、ご自身の持ち方の「再確認」と思ってくださいね。より自由に振舞えるようになるための。今現在「持ててる」「吹けてる」んですから、大改造が必要なわけではないんです。

 

 第4回に登場したベトナムの笛のような、簡素なつくりの横笛、吹いたことないですか?ないかなあ?なかなかありそうでないかもしれませんね。こんど教室に置いておきますが(笑)…

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 これはパキスタンの笛ですが、キィがないですからフクザツなことを吹こうとすると難しいけど、すぐに吹ける簡単なメロディ、あるいは「ソラシラソラシラ」みたいな、暴走族のエアホーンのような簡単なフレーズでもいいんだけど、その範疇ならばフルートよりゼンゼン易しく吹けることにオドロくはず。

 

 その理由は、

 

①楽器が小さくて軽くて持ちやすい ので手に無理がかからず、指を動かしやすい

②軽くて、とも絡みますが発音自体が容易であまりアンブシュアを気にする必要がない

 

が主な理由です。エスニックな横笛の多くは6穴で、左手親指のところに穴はないので、人差し指の付け根と対にして「むにゅ」と握ればいいんで、持ち方の苦労もないわけですね。

 

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 裏返せば、僕らのフルートの場合これらの部分を参考にすればもっとラクに吹けるようになる、と言えるわけです。で、持ち方。

 

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 フルートを上手く持って支え、両手の指を自由に動かすためには、「テコの原理」を2カ所に使います。第一テコは右手。親指が支点、小指が力点です。作用「点」がはっきりしませんが、小指を下に押すことで、歌口側が持ち上がります。軽いエスニック笛ならばほとんど意識しなくてもいい部分。でも同じことやってます。重量があるフルートの場合はちゃんと意識したほうがいいわけですね。

 

 ここでひとつ、補足説明をしておかなければなりません。フルートの持ち方・支え方にはもうひとつ、「3点支持法」と言われるものがあります。これは次に書く「第二テコ」をメインに支える方法なのですが…

 

 こちらはアンブシュアと密接に絡んできます。アンブシュアの項で、そのひとにとってのベストなアンブシュアは個人差がある、とお話しましたが、唇を引き気味にセットしたほうが吹きやすく、いい音がする、持久力もある、というひとにはこの3点支持法はメリットがあります。言い換えれば「ルーズリップ」気味のほうが吹きやすく、いい音がするひとには向かない、ということです。この続きは次の「第二テコ」のことを説明してから書きます。

 

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 上から見たの図。へたくそな絵ですみません。でもこれでお解りいただけるように(ダメ?)、左手(の人差し指の付け根)を支点として、右手全体が力点(点じゃないですね)、で作用点である唇(下あご)に押し当てる。

 左手には、フルートの重量の大部分が人差し指の第3関節にかかるのと、この第二テコの支点として人差し指の第2関節と第3関節のあいだ、垂直に近い面で力を受け止めます。合成されるとベクトルは斜めに下前方向、ということになります。現代のベームフルートは、基本的にはこのような原理で支えます。同時に少し下唇を押さえることになって、アンブシュアを安定させてもいます。

 このへんのバランスが上手くとれると、左手親指は自由になります。わりあいよく見かけるのが、親指でフルートを「押し上げて」しまっている状態。第一テコと第二テコのセッティングが上手くいけば、左手親指は楽器を支える仕事を手伝う必要はありません。

 「3点支持法」では、第一テコは使いません。右手親指先で楽器の側面を前に押すように持ちます。この場合、上図の右手部分での力点は右手親指のみで、「点」になります。

 

 これらもエスニック笛ならば、軽いがゆえに意識はしなくても大丈夫な部分。発音しやすい竹(葦)の笛でも、吹きたい音域・音量によって、唇にどのくらい押し付けたら出しやすいか、思った通りの音色(ねいろ)が出るかは演奏中常に、微妙に変化しますが、軽い・持ちやすい・振り回しやすい(?)から、出音の具合を聴いて無意識に丁度良く調節しているわけですね。

 

 さきほど「現代の」とお断りしたのは、ベームフルートも過去には、地域によっては違う支え方をしていた時代があるからです。19世紀後半~20世紀始めころの楽器には、左手の親指と人差し指の間の指の股に載せる「クラッチ(ハンドレスト)」が付いている楽器が、ドイツの木製の楽器を中心に多く見られます。ルィ・ロットをはじめとするフランス系の金属管の楽器にはあまり見られませんが、これは純粋に楽器の重さの違いと、求める音色のイメージの違いからくるアンブシュアの違いが絡むと思います。ロットは軽いからね。300g代、てのもザラですが、木管になると、僕の楽器もそうなんですが500g以上が普通です。それに加えて、この時代の奏法(正確に言えば木管のフルートを好んだひとたち)が、唇にはあまり押し付けない吹き方だったと思えるのですね。そうなると上の「第二テコ」の必要があまりないんで左手の役割は重量を受け止めるのみ、だったらハンドレストで指の股に重量かけてしまったほうが持ちやすい、てことだと思います。みなさんが最初の頃苦労した、左手人差し指の曲げ具合、とかから解放されるわけですから。逆説的には、ハンドレストを持たない現代の楽器(現代の奏法)では、「第二テコ」をつかって「ある程度」唇(下あご)に押し当てることが前提になっている、ということです。「タイトリップ」気味の奏法のひとは、左手で押し付ける方向が水平に近く・・・つまり強めに押し付けても大丈夫。3点支持法おっけです。「ルーズリップ」気味のひとは押し付けはアンブシュアの都合を優先して、下唇のかたちが変わってしまわない範囲、ということになります。3点支持法は向きません。 これらは身体的個性(唇まわりの組織、骨格の個人的特徴)で「押し」をどこで受け止めているか、によっても違うんですが…

 

 

 現代では、このころよりもはるかに速いフレーズや運動性能、ダイナミクスをこなすことが要求されるようになりました。まぁベームフルート登場以前でも、トゥルーのような超絶技巧名人はいたんですが… そうは言っても、それって音大受験生とか、プロのタマゴの話しですよねぇ。皆さんが吹きたい曲にはそこまでの性能を要求される部分はないかもしれない。でも、それだけのポテンシャルがあるわけですから、まだ追求の余地あり。もっと自由になれる世界が先にある。(*^^)v
 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/05/07

第5回

 

 「アンブシュア その2」

 

 楽器演奏のテクニックって、何が目的でしょうか?

 

 ひとつの表現としては、「イメージした通りの音を出すため」なんじゃないかと思います。

 だから、「イメージ先行」が大切と思うんですが、初めてフルートを持ったときは、音自体のイメージはあくまでも「聴いたことがある」フルートの音のイメージ。聴くとやるとは大違い。実際に自分で音を出してみた最初はイメージ通りに、なんて遠く及ばなかったはず。

 

 そこから練習を重ねてくると、こんどは「現実」(笑)が目の前に立ちふさがってくる。「キレイな音が出せない」「安定しない」「うまく持てない」「指が動かない」・・・

 

 現実を理解したうえで、目的は「イメージした通りに吹ける」が究極であり、テクニックはそのために必要なもの、と思います。

 

 つまり、「練習すること」が必須条件ではないわけですが、練習なし、ではアリエマセン。マトリックスのネオのように、心にイメージしただけで身体が自由自在に動いてくれれば理想的とは思いますが、「アリエマセン」。まあ脳が無意識に身体にかけているストッパーを外すように、てところは解りますが。

 

 英才教育的に、まだ脳の思考エリアが未発達そのかわりに柔軟、の12歳くらいまでなら、「よい教師の指導」と「家庭内でママゴンの監督」が備わっていれば、本人たいした理解がなくても上達します。本人が本当にフルートが好き、音楽が好き、ならばママゴンは必須ではありませんが。でもみなさんはシニア。同じ方法はベストではありません。シニアはね、子どもと比べると「身体がカタい」「新しいことを覚えにくい」のハンディキャップを逆手にとって、「亀の甲より年の功」じゃなかった、「知識のサポートを自分の練習に結び付けること」が大切になってきます。アタマで理解したことをカラダの感覚に置き換えていくわけですね。

  

 前回今回のテーマになっている「アンブシュア」絡みだと、前回に書きましたが「アンブシュアは単独で存在するにあらず」、息と口周りの連携を理解しておくことが大切です。

 

息ビームのパラメータ

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 「音が鳴る」のは純粋、物理現象ですから。空気流が持つエネルギーを音響エネルギーに変換するわけですね。 

 「息ビームの流量」は、実際のところは「息ビームの太さ」と感じるかと思います。

 

 上図で、単に「息の~」ではなくて「息ビーム」と書いたのは、ここが誤解されていることが多いからです。「息ビーム」とは、唇から吐き出されたあとの息の流れのことをいいます。

 「唇から吐き出されたあと」ですから、身体の感覚的には実はよくワカランのです。例えば、おなかちからいっぱい、でクチビルも堅く締めて、という状態。吹いている本人はさぞかし速い息を吹いているように思っていますが、楽器を唇から話して手をかざしてみると解りますが、じつはスピードの遅い息しか吐きだされていません。締めた唇が抵抗になっているからです。おなかそのまま唇を少し緩めるとガゼン息ビームの流速が上がります。流量も増えてしまいますが。

 

 そこで思い出したのが、むかしむかし、僕がフルート習いたてのころに、萩谷康一先生のところでやらされた課題。

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 フルートクラブ版アルテフルート教則本の15課に、各調でのアルペジオ練習の課題がありますよね?あれに上図のようなスラーとクレッシェンド・ディミヌエンドをつけて、8分音符60のテンポで吹きます。なのでゼンゼン指のための練習ではなく、クレッシェンド・ディミヌエンドも「音程」とかを気にしなくていいです。ひたすら意識するのは、

 

 「アパチュアのサイズをキープする」

 

アパチュアとは上下唇間の「息穴」のこと。これの大きさを変えないことが第一目的です。つまり、最初の音をキレイに出して、口周りはそのまま指だけ変えていくと途中からうまく鳴らなくなってくる。それをカヴァーするために吐き出す息の量を増やす。結果クレッシェンド・ディミヌエンドになる、というわけです。身体の感覚を呼び覚ますことが目的なので、最初の音は理想的な音、自分が出せる一番いい音、が必要ですが、上行するにつれ音程・音色ともヨロシクナイ音になってきます。それでいいんです。

 「息ビームのパラメータ」の図をもう一度見てもらうと、高い音を出すためには息ビームのスピードが必要です。アルペジオの最初の音からスラーで(ひといきで)オクターヴ上まで行くわけですが、そのためには音上行のあいだは息加速、下行に転じたら息減速、なわけですね。アパチュアのサイズが一定なので、息が加速(つまり「強く吹く」状態ですね)すると流量も増える。なので二次的にクレッシェンドになる、ということです。

 このへんを、未分化なコントロールでなんとなくこなしているところ、再確認しようよ、というのがこの課題の意図だったのですね。もちろん再確認して終わりではなく、身体の感覚(身体的記憶)に持って行っておくことがカンジンです。ここまで読んできてアタマ痛くなってきたアナタ。大丈夫です。リクツがフルート吹くわけじゃありませんから。すべては結果、つまり音がどうなったか、で判断できます。単純に、「狙った音ではなくてひっくり返った」のなら息ビーム速すぎ、「高い音が出しにくい、保つのが苦しい」ならば息ビーム遅すぎです。ではどうしたら、を考える手助けをしてくれるのが知識。固定観念にハマりこまないために、身体の感覚を柔軟に捉えられる状態を意識することも大事です。それらこれらが積み重なって、「思った通りに吹ける」カラダが手に入ってくるのだと思います。ネオみたく「念じるだけ」じゃダメなのねー (+_+)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/05/06

第4回

 

 第4回のテーマは、

 アンブシュア

 

 順序違くね?と思ったアナタ。正解! あえて「音の開発」を先に持ってきたんですが、それはアンブシュアを改良しようとすると、いろいろメンドくさいことが絡んでくるから。それに…

 

 アンブシュアはそれ単独での「理想」があるわけではなく、他のスキル… 楽器の持ち方・支えや呼吸のコントロール、身体全体の使い方と絡んでいます。それに… まぁ私見の要素が大きくなりますが、個人個人で異なる身体的特徴と絡む部分も大きいと僕は考えます。つまり複雑とも言えるし逆に考えすぎないほうがいいとも言えます。でね、

 

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石和橋たもとの笛吹権三郎像。洪水に流されてしまった母のことを篠笛を吹きながら探し回り、最後は自らも濁流に呑まれたという、笛吹きの神のひとりですが、銅像とはいえ、フルートのアンブシュアとほとんど同じに見えますよねぇ…(てランボーな)。

 

 もひとつ、

 

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 ハノイストリートミュージシャンたち。ベトナムって横笛を愛好する人多くて、Facebookのオトモダチにも、以前にフェスティバルで知り合ったハノイ音楽学校の先生つながりの笛吹き、大勢いるんですが、

 

 やっぱりアンブシュアは、フルートよりすこしユルいかな、って程度でほとんど同じに見えます。ユルくみえるのは実際のところ、楽器側の抵抗の問題で、ユルくても鳴るからです。横笛を「口で」吹く以上(フィジーやフィリピン、台湾やハワイには鼻で吹く横笛がありますが)、同じニンゲンの口を使って吹くんですから基本は一緒、ということです。ですからフルートの場合も、口(唇)のどこをどう使って吹く「べきか」なんぞという些末なことより、「どうやってふさわしい音を出すか?」になるわけです。

どうやって「自分が出したい音を出すか?」ですね。ですから先に、自分が出したい音のイメージを、出来る限りはつかんでおきたいわけですね。

 

 唇自体は、からだの各部のなかでもダントツに敏感で、柔軟です。かなりカタチを変えられます。ですからアンブシュアも、追求しだすと結構どうにでもなるんで、かえってワケがわからなくなるパターンに陥る… がよくあります。逆に、まぁなんとかはなってるんでそれ以上はナシで放置、もよくあるんですが。それと、初級中級のころよくあるのは、「相手(この場合クチビル、またはアンブシュア全体ね)への理解が不足で結果安定しない」ですね。

 

 ほかの要素との擦り合わせを考えないと、いつまでも結論が出せません。音を一つだけ、mfで伸ばして吹くだけならば相当にいろんな吹き方が出来ますが、たとえば「指」という要素が絡んだだけで、指使いをさまざま変えても、16分音符だ32分音符だ跳躍だ、とかが出てきても安定したアンブシュアがキープできなければなりません。そのためには「ベトナムの笛に比べると」ある程度下あごに押し付けることが必要で、そのへんも「ベトナムの笛ほどは」ユルく吹けない原因でもあります。

 

 で、このことばかり考えていては「地下鉄はどこから入れるんでしょうね?寝られなくなっちゃう」(古いか?)になってしまうので、「音のイメージ第一に」、唇のことは考えすぎないこと、になってしまうのですね。もうひとつ書き添えておくならば「無理しない(させない)こと」。お話したようにクチビルかなり柔軟なので、かなり無理ききます。短時間ならば。でも日常の行動と同じで、無理は長続きしません。このへんが「身体的特徴の個人差」に関わるところです。あごの骨格、唇組織の筋肉の違いなど、限りなく「個性」があって、ある人は唇引っ張り気味にテンションを与えたほうがいい音がする、でも違う人には「唇を引っ張る」こと自体が向かない(すぐ疲労する)ということもあります。

 多少の「トレーニング」は必要としても、追求のあまりいつのまにか「それはムリ」領域に踏み込んでいるパターンもままあるので注意。でも自分では気が付かなかったり、もアリガチです。まぁそういう時のためにわれわれのような人種がいるんですけどね。よく言われるように「独習」だとそこいらじゅうに落とし穴があって、気づかず落ちてしまうことも。「先生」はそこから救出する役割ですから。でも正確には「ひっぱりあげる」んじゃなくて「脱出法を教える」(つまり這い上がるのは自力で!)なんですが。

 

 公開の記事にしてはいますが、基本は僕の生徒さん向けの「在宅ワーク」の素材です。僕とお付き合いのある生徒さん方はご理解いただいていると思う(信じる?)んですが、あまり一般的なアプローチではないです。「一般的に」ならば、常識的なカリキュラムに従ってエチュードを段階的にこなしていけば、解らなかったこと(概念)の理解とともにスキルもついていきます。エチュードを無視するわけではないんですが… 僕自身、日課練習としてスタンダードなエチュードは必ず吹きますから。なので、偶然なにかの縁で出会った、ちーとへそ曲がりな先生の、「へそ曲がりな発想」だと思ってくださいね。常識的な内容は他にいくらでもありますから、そちらご参照を。 (*^^)v

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/04/30
第3回

 

 それじゃあ第3回いきます。今日のテーマは、

 

 「音の開発」

 

 オイオイおそうじからいきなり難しいハナシに、って思わないでね。みなさん、何を目的にフルート吹いていますか?楽しむため。おっけ。ではどういうふうに吹けたら楽しいですか?

 

 このへん、それぞれでいいです。クラシック音楽の場合だとなんとなく「カリキュラム」のようなものがあり、フルートならアルテスの第1巻から始まってケーラー、アンデルセンベーム、ススマンのエチュード、みたいな。

 

 これらを一生懸命に(ユルくてもいいんですよ!)段階を追って吹いていくと、自然にフルートでいろいろな曲を吹きこなすスキルがついていきます。そこが伝統的な、時空を超えて受け継がれている名エチュードたるゆえん。音のコントロールも当然その中に含まれます。でもこれ、ある意味「クラシック音楽限定」スキルなんですよね。

 

 だから、「わたくしクラシックの楽曲はまったく興味ありませーん」という場合は、必須とはいいません。烏山の教室には、バッハだフォーレだとかは「なんだそれ」で、長渕剛とかをひたすら追求するオジさん、いますから(笑)。目的はそれぞれでいいんです。


 

 で、カラオケに合わせてフルート吹いてみたこと、ないですか?「川の流れのように」でも「花は咲く」でも、はたまた「イエスタディ」でもなんでもいいんだけど。それで、「なんかサマになんねーな」と思いませんでしたか?

 

 そのワケのひとつは、「クラシック音楽限定」の音で(さらに言えば価値観で)吹こうとするからなのです。美空ひばり、美しい声ですけどクラシックのオペラ歌手とは違いますよね?ベルカントと比べてしまったらむしろ「ダミ声」の部類かもしれない。でも「川の流れのように」は、あれじゃないとダメなんです。もちろん大歌手美空ひばりですから、その人の音楽性ってもんもあるんで、同じ声だけ持ってても同じように歌えるわけではもちろんないですが。

 

 クラシック音楽にはそれにふさわしい音色(ねいろ)と響き、ジャズにも、ポップスにも、キューバンラテンにもそれぞれにふさわしい音があります。それとね、「作曲家(作詞家)と演奏者、どっちがエラい?」がね、クラシックだと「ベートーヴェン交響曲第5番運命、指揮カラヤンベルリンフィル」でしょ。ポップスは「美空ひばり/川の流れのように、作曲… 誰だっけ?(見岳 章センセイです。ちなみに作詞は秋元 康ですから。AKBだけじゃないんですねぇ)バンド… 誰も知らない」でしょ。順番が違ってて、オリジナル歌唱が重要な意味を持つんですね。で、それにふさわしい音を手に入れるにはどうしたら?

 

 21世紀、現代ならではのテクノロジーにあふれています。100年前、いや20年前ですら想像もできなかったようなものが。そこでオススメするのは、

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 YouTubeの活用。でもだれちゃらがフルートで吹いてる「川の流れのように」を一生懸命聴いてもダメよ。美空ひばりのオリジナルをよーく聴くんです。もし「川の流れのように」を吹いてみたい、と思っていたら多分楽譜を手に入れてると思うんですが、はい、ここが落とし穴の入り口。クラシック「だったら」楽譜は隅から隅まで、アーテュキレイションから発想記号まで、ひとつの見落としもないように読むところから始まりますが、ポップスでは必ずしも、楽譜は「絶対」ではありません。 

 

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 市販の楽譜だと、「川の流れのように」のメロディ冒頭は上のAみたいなカンジだと思います。「KEYが違う」とかそういうことじゃなくて、音符とかアーテュキレイションとかがです。でもYouTube上にある、「美空ひばり最後の映像」をよく聴くと、どう聴いてもBのように聴こえます。
 これは「ニュアンス」のたぐいだとは思いますが、じっさいのひばりサンを聴かないでいくら楽譜で「あーでもない、こーでもない」とやっててもサマにならないことは確か。別に形態模写するわけじゃないんで、ひばりサンが歌っているニュアンスをそっくりそのまま真似る必要はないんですが、ビブラートの付け方だってクラシックの常識的なビブラートとは違うじゃない。そのへんは「よく聴けば」、サマになるように吹く方法は見えてくるってもんです。本来、芸事は「口伝」によるもの。楽譜は文字とおなじで、もし楽譜がなかったら情報伝達にはエラく時間がかかるし、文字を持たなかったインカ文明のように、後になったらなにやってたかよくわからない状態になってしまいますが、「音楽」なんだから聴くことのほうがはるかに重要度高し。

 

 

 きょうの標語。

 

 「視野は広く、思い込みはキケン」

 

 

 

 おあとがよろしいようで m(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/04/30

第2回

 

 前回は楽器のおそうじのお話でしたが、まだおそうじしていない部分があります。

 

 そう、「頭部管」

 

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 外側はクロス拭きしているとして、普段やっていないところがここ、チムニー(ライザーとも言います)の内側。毎回掃除しなくてもいいんですが、たまにやっとかないと結構汚れてたりします。

 

 方法は、例によって綿棒に消毒用アルコールを含ませて拭く。今のご時世ぬるま湯で代用可。でもここには例のアルカリクリーンシートは使わないほうがいいかも… なんとなく。そのわけは、この部分は大変にデリケートなので、綿棒でさわる程度にとどめておきたい、ということもあります。穴のフチには絶対にさわらないように、円筒の内側を壁に沿って拭くていどにしておいてください。あ、ちなみにここの汚れって、フルート吹く前にかならず歯磨きするか否かでエラく違いますから、吹く前歯磨き習慣のない方はこの際、「一生自分の歯を使おう」のためにも習慣にすることをオススメします。ま、故吉田雅夫先生によれば、総入れ歯を入れ忘れてもフルートは吹ける(しかもいい音がする)らしいんですが…

 

 穴のフチ(エッジといいます)デリケートなんだから、ついうっかりブツけたりしないように気をつけてね。あ、それにリッププレート自体、銀製だと強く押したりすると簡単に曲がります。いちばん最初にフルート持ったときに、取り扱い方としてリッププレートの部分は握らないように、って言ってあるはずなんですが、いつの間にかわすれて思い切り握ってないか、確認してみてください。

 

 

 

 おそうじばかりでなくてそろそろレッスンらしいことを、と思いますので、次回からはそれらしくいたします( ^^) ~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/04/28

第1回

 

 前代未聞の事態で家に籠らなくてはならなくなってはやひと月。普段からユルい僕のクラスですから、最初のうちは「レッスン出来なきゃお休みにしといたほうがみんなも僕もウレシイじゃん」と思っていたのが、そうも言っていられなくなってきました・・・

 

 でも、日頃のレッスンを思い出していただければお解りかと思うんですが、

「個別対応・その場対応・オリジナル教材・思いつき重視」のわがクラス、ビデオチャット使ったとしてもリモートで成り立つとは思えないですよねぇ。

 

 内容もみなさんそれぞれ違っていますから、ここでは共通する、どちらかと言えば欄外のことを並べます。このへんは普段、時間がなくて説明が行き届いていないかもですから。

 

 

 記念すべき第1回のテーマは、

 

 「おそうじ」

 

 

 

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 フルートの細かいところ、キィの下の台座部分などは、普段クロスで拭くときにも届きませんから、ホコリがたまりやすいところです。ご自身の楽器のキィデザインがピントップアーム(画像のような)の場合には、キィカップとアームの境の部分にも汚れがたまりやすいですね。

 

 クロスの届かないポスト(キィを支えている円柱)や台座は市販の綿棒に消毒用アルコールを少し含ませて拭いてください。消毒用アルコールが貴重な昨今、ぬるま湯でもいいです(すぐさめるけど)。

 

 ピントップとの境は、やはり消毒用アルコールをペーパータオルに少し含ませて、親指の爪先をうまくつかって拭きます。ゴールウェイも「アルコールで拭いてキレイに保ちましょう」って言ってた。でも今、消毒用アルコールは貴重品ですよね。そこで登場するのが、

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 この手は弱アルカリ性ですから、フルート表面の黒ずみにも若干ながら効果があります。あれは酸化銀ですから、酸化還元反応で多少なりとも中和します。ピントップの陰にたまっている黒いよごれも、手の分泌物+ホコリですから酸化物。

 

 でもフルートのおそうじ、大事なことは「やりすぎないこと」。使い続けて年期が入った銀のフルートの黒ずみは完全には落ちません。リペアさんに頼んで磨いてもらえば新品同様のピカピカになりますが、だいたいが銀のフルートはいぶし銀の趣になってこそ価値がある、と以前は言ったもの。最近の若い世代は異常に変色を嫌がりますが、潔癖症世代なんでしょうねぇ…

 

 あ、ちなみに金とかプラチナの楽器は変色しませんから、ご予算に応じてどーぞ(笑)。銀の楽器用に、ケースに入れておいて変色を防ぐシートとかもあります。
 
 

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 よく見えないかもですが、キィのパイプから短くて黒い突起が生えているの、分かりますか?

 

 これはノックピンといって、キィのパイプと芯金を止めているのですが、出っ張っている部分にはよく手が触れるので、サビがちです。(メーカーによってはステンレスの場合もありますが)

 

 ここもアルカリおそうじシートで拭いておくと、多少なりともサビの進行を遅らせられます。まぁこれを抜くのはオーバーホールの時くらいなんで、リペアさんはサビてアタマがなくなっていても抜いてくれますが。

 

 

 

 おそうじ以上。質疑応答はメール、ショートメールかLINEで (*^^)v